- MOVIE -
“パンクジャズ”を提唱しながら、既存のジャズに捉われず、音に個性を付帯させて表現をするバルフォア氏。オーケンコールのビジュアルに登場する彼は音楽に対する姿勢やこれまで生きてきた人生観が“イギリスのモノづくりの再興”をブランドアイデンティティとする『オーケンコール』のスタンスと通じる部分があります。バルフォア氏に音楽やファッション、そしてイギリスについてインタビューしました。
16歳の時に、教会の音楽隊としてサックスを吹き始めたのが最初の経験。そこに集まったのはプロではなく音楽の初心者で、そこからみんなでいっしょに音を鳴らすことからスタートした。音楽隊から離れてからは、友達の家で演奏して、その演奏したものを録音していた。今となってはその録音したもののクオリティーがあがっていき、アルバムにまでなったという感じさ。サックスを通して自分を表現するということが、色々な人生における変遷においても、変わらずに自分の中心部にあるもののひとつ。音楽は、僕の人生の中でぶれずに継続されているものなんだ。
僕は平日の昼は、ITのビジネスアナリストとして働いている。夜の時間、週末の時間に演奏して欲しいという依頼が入った瞬間に、サックス奏者としての自分になる。いわゆる2つの顔をもち、その2つの世界でバランスを取り生活をしているんだ。この16年間、そのような形で私はミュージシャンとして存続し続けていて、サックスを通して、日中オフィスの中であえて口にしないような気持ち、感覚なんかを表現していく、もしくは人に見せていく、伝えていくんだ。自分自身の個性を何かに乗せて表現していく、その媒体が僕にとってのジャズで、パンクなんだ。それを僕自身は“パンクジャズ”と表現している。クリエイティブなことを続けていくことが、自分の中にある、ふつふつとした何かを育てていくのが僕のひとつの生き方だ。
日中の仕事をもつということは、やっぱり生活が安定して、本来自分自身が表現したいものをお金や生活というものに縛られずに、思いっきり吐き出せる状況を作るというのが、自分にとってすごく大事なことなんだ。そういう安定した部分があるからこそ、週末や午後に、バンドやイベント、もしくは自分自身で作曲したりという時間に、何も心配することなく自分の感情を爆発させられる。だからそのバランス感をとるために、自分の仕事はとてもありがたいことだし、大事なことだと思っている。
やっぱり多文化国家だということかな。全く違う様々な文化があって、それぞれが奴隷制度や戦争など、長い歴史の中で根付いているんだ。ジャズも同じように、いわゆるブラックヒストリーを持っていて、贖罪意識や罪の意識を内包している。だからこそ「BLM運動」のような人種差別撤廃運動が積極的になっているいま、改めてジャズが注目を集めているのだと思う。多様化する文化の中で、人間(表現者)は何を思っているのか、国は何を考えているのかっていうのが求められていて、いまはその答えをジャズに見出している。様々な文化が、歴史の上に成り立っていて社会情勢に伴って再発見されている。そういうムーブメントを感じるんだ。
家を出る、街や人に見られる場所に出ていくというのは、私がそこで言葉を発するに関わらず、私自身がどういった人間であるかを伝えられる機会であり、着こなし、装い、ヘアースタイルはどうなっているか。それらすべてが自分自身を伝える機会になると思っている。なので、私がその時々で選ぶ服やファッションは自分自身を体現するかどうかを意識している。
すごくクオリティーの良いジャケットだね。すごく軽くて、動きやすいから、サックスを演奏する時にもとてもいい。特に僕は両手を動かすから、軽くて余裕のあるジャケットていうのはすごく使いやすい。ブルーでキルトっていうのはスコティッシュっぽいよね。こんなに薄くて軽いのに、断熱されていて暖かい。これであればロンドンなら一年を通して着れます。暖かい日であっても丁度良いし。キルト生地ってのもなかなか良いと思うよ。
先のことよりも、今が大事なんだ。10年後にどこかにいくっていうより、今をどういう風に過ごしていくかっていうのが、10年後、自分を想像もしないところに連れていってくれると思う。だから、10年後のことばかり考えてそこに行けない自分にフラストレーションを感じるよりも、今を大事にするんだ。日々ものを作って、クリエイティブに生きる。それは仕事をするっていうこともだし、音楽をするっていうこともだし、人に会って仲間を作るのもクリエイティブだ。自分の中で物事に線を引くのではなく、こういう選択肢もあるんじゃないかと、チャレンジングに自分の生活の中で実践していくということを、日頃から、その瞬間ごとにやり続けていくということが自分にとっては、10年後よりも大切かもしれない。